ご挨拶
第19回日本医療バランスト・スコアカード研究学会学術総会の会長を仰せつかりました早稲田大学の清水です。本稿で学術総会を開催させていただくことになり、大変光栄に存じております。
KaplanとNortonがはじめてバランスト・スコアカードの論文を世に出したのは、1992年のことでした。爾来ちょうど30年が経過し、バランスト・スコアカードの経営ツールとしての優秀性は世界中で証明されてきました。バランスト・スコアカードが優れている点は、財務的な成果を導くドライバーとして、顧客(患者)、内部プロセス、学習と成長という3つの非財務的視点が導入され、長期的かつ安定的な財政基盤を作り上げるためには、顧客をはじめサプライヤー、働く人々、さらにはICTや組織文化に至るまで、様々な領域のステークホルダーやツールを包括的に考察する必要があることを明示した点にあります。
今回の学術総会では、バランスト・スコアカード誕生から30年経った今こそ、原点に立ち返って経営ツールとしての可能性を今一度見直し、これによって、大きく変化していく医療界におけるバランスト・スコアカードの有用性を確認すること、また、さらに経営ツールとしていかなる発展が見込まれるのかといった点について議論して参りたいと思います。
ここ数年、Covid-19パンデミックにより、各種の学会や研究会もオンラインでの開催が多くなってまいりました。オンラインのミーティングの利点は、何よりも移動の時間を取られず、自宅や職場から遠く離れた会場に参加できる点であります。他方、こうした取り組みは、人々が直接向かい合うことによる化学変化を封じ込めてしまう可能性も否定できません。今回は、久しぶりに学術総会を対面で開催することとし、会員の皆様を早稲田にお迎えすることになりました。現状では懇親会も用意しております。感染状況が極端に悪化しない限り、感染対策を十分とりながら、会員の皆様にお集まりいただき、対話を行い、そして新たな発見がある有意義な学術総会としたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
2022年7月吉日
第19回 日本医療バランスト・スコアカード研究学会学術総会 大会長
早稲田大学 商学学術院教授 清水孝